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認証の基礎:FIDO2の紹介

20/06/2024 - Chris Collier

認証技術の世界において、セキュリティの強化と使いやすさは二律背反と言われています。本稿では、この2つの要素を両立できる技術としてFIDO2(Fast Identity Online)を紹介します。FIDO2は、より安全でユーザーフレンドリーなオンライン認証プロセスを目的として、FIDOアライアンスとW3C(World Wide Web Consortium)によって開発された認証規格です。ソフトウェア管理者は、FIDO2を理解し実装することで、アプリケーションやサービスのセキュリティ体制を大幅に強化することができます。以下で、FIDO2のメリットや実装、導入する上での課題に関する重要なポイントを紹介します。

FIDO2のメリット

  1. 強力な認証:FIDO2は公開鍵暗号を使用しているため、従来のパスワードベースのシステムよりも安全です。ユーザーは、物理的なデバイスであるハードウェアトークン、生体認証データやPINを使用して認証する必要があるため、フィッシングや中間者攻撃への高い耐性を備えています。
  2. パスワードレス・エクスペリエンス:FIDO2はパスワードレス認証を可能にし、脆弱、再利用、漏洩といった懸念事項を抱えるパスワードへの依存を減らします。これは、よりシームレスで安全なユーザーエクスペリエンスの実現につながります。
  3. コンプライアンスと標準規格:FIDO2を採用することで、GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)やPSD2(Payment Service Directive 2:欧州決済サービス指令)などの規制で指定されている、強力な認証方法に関連するコンプライアンス要件を満たすことができます。

実装する上で考慮すべき事項

  1. インフラの準備:現在のインフラがFIDO2に対応できることを確認します。これには、ソフトウェアの更新、IDプロバイダとの統合、FIDO2対応のハードウェアやデバイスとの適合性確保などが含まれます。
  2. ユーザーの啓蒙とオンボーディング:FIDO2を利用するメリットや使用方法についてユーザーの理解を深めます。FIDO2へのスムーズな移行には、オンボーディングプロセスでの明確なインストラクションとサポートが重要です。
  3. 多要素認証(MFA):FIDO2はパスワードレス認証に使用できるだけでなく、多要素認証の一つとして使用することもできます。FIDO2を他の要素(知識情報や所持情報など)と組み合わせることで、さらにセキュリティを強化することができます。

技術的な導入の手順

  1. FIDO2サーバーのセットアップ:登録と認証プロセスを処理するFIDO2サーバーを配置します。このサーバーは、依拠当事者(アプリケーション)とユーザのFIDO2認証機能との通信を管理します。
  2. 依拠当事者の統合:アプリケーションをFIDO2サーバーと統合します。これには、通常、認証フローを更新して、FIDO2の登録とログイン手順を新たに組み込む作業が含まれます。
  3. 認証器の管理:登録、削除、回復オプションなど、ユーザー認証器を管理するシステムを導入します。また、冗長性を確保するため、ユーザーが複数の認証器を登録できるようにします。
  4. セキュリティポリシー:FIDO2の使用に関するセキュリティポリシーを定義します。一例として、必要な認証タイプ(ハードウェアトークン、生体認証など)の決定、再認証が必要になるタイミングや頻度に関するポリシーの設定などがあります。

課題と検討事項

  1. ユーザー側の受け入れ:従来のパスワードシステムからの変更に抵抗感を持つユーザーもいます。段階的な導入と明確なコミュニケーションによって、こうした抵抗は軽減できます。
  2. 適合性:選択したFIDO2ソリューションが、幅広いデバイスやブラウザに対応していることを確認します。これには、複数のベンダーやプラットフォームとの連携が必要になる場合があります。
  3. 回復メカニズム:ユーザーが認証器を紛失した場合に起こり得る事態を想定します。バックアップコードや代替認証オプションなどの回復方法を実装します。
  4. コスト:ハードウェアトークンの購入やシステムの統合など、初期設定には多額のコストが発生する可能性があります。ですが、セキュリティの長期的なメリットとパスワード管理コストを削減できるメリットは、投資を正当化するものと言えるでしょう。

ベストプラクティス

  1. パイロットプログラム:本格的な導入に先立って、潜在的な問題を特定し、フィードバックを集めるため、試験的なパイロットプログラムから始めます。
  2. モニタリングと分析:認証試行の追跡、異常の検出、使用状況の統計を収集するための監視ツールを導入します。
  3. 継続的なアップデート:最新のFIDO2標準とアップデートを常にご確認ください。セキュリティの状況は常に進化しており、システムを最新の状態に保つことは極めて重要です。
  4. ユーザーサポート:セットアップ、使用方法や回復の手順など、FIDO2認証に関する疑問や質問に対応するユーザーサポートを提供します。

まとめ

ソフトウェア管理者の皆さまにとってFIDO2標準の実装は、堅牢で安全、かつユーザーフレンドリーな認証方法をユーザーに提供でき、セキュリティ対策の大幅な強化を実現するものです。実装や導入に当たっていくつかの検討事項はありますが、セキュリティの強化とユーザーエクスペリエンスの向上というメリットは、最新の認証システムへの投資を価値あるものにします。


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